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「競合は次にどう動くか」「うちはどの市場で勝負すべきか」。こうした問いに答えるのは、これまで経営者や経営企画部門、そして戦略コンサルの仕事でした。
2026年10月12日、NHKは「経営の中枢でAI活用の動き相次ぐ」と報じました。競合他社の経営計画などを分析し、自社がどのような戦略をとるべきかを経営者に助言するサービスが始まったというのです。報道では、日立グループのほか、富士通やNECの取り組みも紹介されています。この記事では、会社が仕組みを詳しく公表している日立グループの事例を取り上げます。
AIが戦略を考えるようになると、「戦略を考える仕事」はなくなるのでしょうか。このニュースを手がかりに、そもそも経営戦略はどう作られているのか、そしてAIと人の役割分担を考えます。
日立グループのAI企業ハピネスプラネットは10月8日、企業を取り巻く競争環境をAIで構造化する「競争世界モデル」の提供を始めたと発表しました。経営者や事業責任者向けのAI「FIRA」に組み込んで提供されます。NHKは、日立製作所がグループのソフトウエア開発会社とともに始めるサービスとして報じています。会社の発表から、仕組みを整理すると次のとおりです。
たとえば、ある会社が新しい分野への参入を考えているとします。AIは、その会社の強みが生きる需要はどこか、参入したら競合はどう対抗しそうかを分析し、複数の参入戦略を比べられるようにします。日立製作所と連携し、戦略を考えるところから実際の業務につなげるところまで支援する構想も示されています。価格や導入企業は、発表では明らかにされていません。
経営戦略づくりにおいて古くから使われてきた最初の一歩ともいえる考え方は、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つを調べ、自社が勝てる場所を見つけることです。頭文字をとって「3C分析」と呼ばれ、就活のケース面接でもよく使われます。
一般的な流れと、今回のAIが関わる部分を並べると、次のようになります。
これまで①〜③は、経営企画部門やコンサルタントが人手と時間をかけて行う作業でした。今回のAIは、この部分を大きく支援しようとするものです。一方で、発表でもAIは経営者や事業責任者が使う道具と位置づけられており、④の「決める」は人に残ります。
ここからは筆者の整理です。AIが戦略づくりに入ってきても、人の仕事がなくなるのではなく、重心が移ると考えられます。
つまり、「調べてまとめる」部分はAIに任せられるようになる一方で、「問いを立てる」「決める」「人を動かす」力の価値はむしろ高まるかもしれません。AIの出した答えが本当に妥当かを確かめる力も、新しく求められる力の一つです。
「戦略を考える」仕事は、会社の外から支援する側と、会社の中で担う側に分かれます。さらに今回のように、そのための道具を作る側もあります。
今回の日立グループのように、IT企業が「道具」だけでなく「戦略の助言」や「実行の支援」まで手がける動きは、コンサルとITの境界が薄らいできている表れと見ることもできます。コンサルを志望する人もIT企業を志望する人も、もう一方の仕事を知っておくと、業界の見方が広がります。
AIが戦略づくりを手伝う時代になっても、「何を問い、何を選び、どう人を動かすか」は人の仕事として残りそうです。最後に、考えてみてほしい問いを2つ置いておきます。
本記事は、企業の公式発表と報道に基づく業界研究のための解説です。特定のサービスの利用や、特定の株式の売買を勧めるものではありません。