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「AIが経営戦略を助言する時代になれば、コンサルの仕事は減るのでは?」。そう考える人もいるかもしれません。
ところが2026年10月15日、コンサルティング会社のベイカレントは、中間決算で売上が約4割伸びたと発表しました。さらに、約10年後に売上を1兆円にするという目標も掲げています。前期の売上は約1,500億円なので、約7倍です。
コンサル会社はどうやって稼いでいて、なぜ今伸びているのでしょうか。そして、売上を7倍にするとは、何を意味するのでしょうか。決算を手がかりに考えます。
ベイカレントの決算期は2月です。10月15日に発表したのは、今期の前半(2026年3〜8月)の成績です。
営業利益率(売上に対する本業のもうけの割合)は約32%です。ユニクロを運営するファーストリテイリング(約19%)と比べても、高い水準です。
あわせて、新しい中期経営計画で、次の目標を示しました。
会社は、上期の成長要因として、AI関連の需要に加え、サイバーセキュリティや防衛関連などの新しい需要を取り込んだことを挙げています。
コンサル会社は、工場もお店も持ちません。売っているのは「人の知恵と時間」です。そのため売上は、おおむね次の式で考えられます。
\text{売上} = \text{コンサルタントの数} \times \text{1人あたりの単価} \times \text{稼働率}
ベイカレントの場合、2026年2月末のコンサルタントは5,590人でした。前期の売上(1,483億円)をこの人数で割ると、1人あたり年間約2,600万円になります(期末の人数で割った筆者の概算)。
今期の前半は、この要素がそろって伸びました。会社の決算補足説明資料によると、2026年8月末のコンサルタントは6,339人で前年同期より30.9%増え、案件数は25.5%増、コンサルタント1人あたりの売上は6.6%増でした。
この式からわかるのは、売上を大きく伸ばすには、人を増やすか、単価を上げるか、稼働率を高めるかしかないということです。特に「人の数」が成長の土台になるのが、コンサル業界の特徴です。
会社の説明や報道では、次のような需要が挙げられています。
会社は今後について、企業のAIに関する支援ニーズが「導入支援」から、会社全体をAIを前提とした組織や業務に変える「AIネイティブ組織・オペレーション改革」の支援へと広がると見ています。エネルギー、半導体、データセンターなど、国の政策に関わる需要の拡大も見込んでいます。
ここからは筆者の見方です。AIは「コンサルの仕事を減らすもの」とも言われますが、今のところは「AIをどう使えばいいか分からない」という企業の悩みが、コンサルの新しい仕事を生んでいる面もありそうです。新しい技術が出てくるたびに、「それを自社にどう取り入れるか」を支援する需要が生まれるのです。
AIが経営戦略を助言するサービスを取り上げた前回の記事とあわせて読むと、「AIによって減る仕事」と「AIによって生まれる仕事」の両方が見えてきます。
前の節の式で考えると、売上を7倍にするには、人数も単価も大きく伸ばす必要があります。仮に1人あたりの売上が今と同じだとすると、必要なコンサルタントの数は次のようになります。
実際には、単価を上げたり、AIなどで一人あたりの生産性を高めたりすれば、必要な人数はこれより少なくて済みます。それでも、採用と育成が成長のカギになることは変わりません。会社の資料によると、コンサルタントは今期の第3四半期(2026年9〜11月)に約7,000〜7,200人に達する見込みです。また会社自身も、新しい中期経営計画で「社内AI活用による一人当たり創出価値の向上」を掲げています。人を増やすだけでなく、AIで一人ひとりの生産性を上げることも、成長の柱に据えているのです。
就活生の立場から見ると、「成長目標が大きい会社ほど、たくさんの人を採用し、育てようとする」ということです。一方で、急に人が増えると、仕事の質を保つことも難しくなります。企業を見るときは、「どうやって人を育てているか」にも注目するとよいでしょう。
コンサル会社には、顧客と向き合う仕事だけでなく、それを支える仕事もあります。
コンサル業界を志望する人は、「何を支援する会社か(戦略、IT、業務など)」に加えて、「どうやって成長しようとしているか」を決算や中期経営計画で確かめると、会社ごとの違いが見えてきます。
コンサル会社の成長は、「人の数」と「人の価値」に支えられています。AIが広がるなかでも、それを企業にどう生かすかを支援する仕事は増えています。最後に、考えてみてほしい問いを2つ置いておきます。
本記事は、企業の公開情報と報道に基づく業界研究のための解説です。特定の株式の売買や、特定企業への応募を勧めるものではありません。会社の目標は発表時点のもので、達成を保証するものではありません。
※営業利益率、1人あたり売上、2031年・2036年の人数は筆者の計算