ディスカウントTOBとは?就活生にもわかる基礎知識

公開日:2025/06/23

ディスカウントTOBとは

ディスカウントTOBとは、市場価格よりも低い価格で株式を買い取るTOBを指します。通常のTOBでは、市場価格よりも高い価格(プレミアム)をつけて買付を行い、株主に対して売却のインセンティブを提供します。しかし、ディスカウントTOBでは、逆に市場価格よりも低い価格で買付を行い、一般株主にとっては応募するインセンティブがないため、事例としては限られており、ディスカウントTOBが発表された場合には、成立の有無や公平性に関して議論を呼ぶことが多いです。

ディスカウントTOBはどのような時に行われうるのか

上記の通り、ディスカウントTOBの事例は限られますが、以下の場合に行われることがあります。

親会社が子会社を完全子会社化する場合

親会社がすでに支配権を持っている上場子会社を完全子会社化する際に、ディスカウントTOBが利用されることがあります。これは、親会社が少数株主の持ち分を買い取ることで、経営の自由度を高め、グループ経営の効率化を図ることが目的です。
例えば、親会社がすでに子会社の過半数の株式を保有している場合、親会社がTOBに申し込めば、市場価格よりも低い価格で買付を行っても、TOBが成立する可能性が高くなります。しかし、少数株主にとっては市場価格よりも低い価格での買収となるため、利益を損なう可能性があり、反発が起こることがあります。

MBO(経営陣による買収)の場合

MBO(Management Buyout)は、以前ご紹介の通り、企業の経営陣が外部資本を活用して、自社の株式を取得することを指します。MBOの目的は、企業の経営方針をより柔軟にすることや、短期的な株価変動の影響を避けることにあります。
本来、MBOを行う際には、市場価格よりも高いプレミアムを付けるのが一般的です。しかし、ディスカウントTOBを利用することで、経営陣が株価を意図的に低く抑えた後に買収を進めるケースもあり、不公平な取引とみなされることがあります。このような状況では、株主が適正な価格での売却を求め、訴訟に発展する可能性もあります。

企業が自己株式を買い戻す場合

企業が自己株式を買い戻す目的で、ディスカウントTOBを実施することもあります。特に、敵対的買収を防ぐために、企業が自社の株式を回収する手段として活用されることがあります。
自己株式の取得は、一般的に市場での買戻しを通じて行われますが、TOBを用いることで計画的に株式を取得できるメリットがあります。しかし、ディスカウントTOBで自己株式を取得する場合、市場価格よりも低い価格で売却する株主にとっては不利益となる可能性があり、慎重な対応が求められます。

投資ファンドによる企業買収(バイアウト)

PEファンドなどの投資ファンドが企業買収を行う際にも、ディスカウントTOBが活用されることがあります。PEファンドは、企業を買収して非公開化し、経営を立て直した後に再上場や売却を目指すことが一般的です。
このような投資戦略では、できるだけ低い価格で企業を取得することが重要となるため、ディスカウントTOBが利用されることがあります。この場合、事前に大株主と話をつけておくことで、TOBを成立させる確率を高めることが最重要と言えます。ただし、少数株主にとっては不利な条件となることが多いため、買収プロセスが批判されることもあります。

具体的事例

ベインキャピタルによるティーガイア買収

ティーガイアは、2024年9月27日にベインキャピタルによるディスカウントTOB(株式公開買付)の対象となりました。ベインキャピタルは、ティーガイアの全株式を1株当たり2,670円で取得することを目指しました。この価格は、同日の終値である3,635円と比較して約26.55%のディスカウントとなります。
このディスカウントTOBの目的は、ティーガイアを非公開化し、長期的な視点での経営改革や事業戦略の再構築を行うこととされています。
市場価格よりも低い買付価格が提示されたため、成立の有無に注目が集まりましたが、大口株主が応じたことにより、ベインキャピタルは過半数の株式を取得し、非公開化に成功しました。

この記事はここまでですが、少しでもこれから就職活動を始める方々の参考になれば幸いです。また、他のライターによる興味深い記事もあるかと思いますので、就活の息抜きにでも読んでいっていただけると幸いです。

みやじ
執筆者:みやじ

受けていた業界/企業:外資系投資銀行投資銀行部門(就職予定)・外資系戦略コンサルティングファーム

同じ執筆者による記事

SIGN UP
会員登録はこちらから
PREPARING FOR
同じカテゴリーの記事一覧