今回はSOLVE5期生(25卒)の方にご参加いただき、最近話題の敵対的TOBに関するレポートを作成しました。27卒の方やSOLVEに入会を希望される方のご参考になれば幸いです。
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敵対的TOBとは、企業の買収において、被買収企業の経営陣や取締役会の同意を得ずに行われる株式の公開買付けのことを指します。通常のTOB(友好的TOB)が経営陣と合意の上で進められるのに対し、敵対的TOBは買収を仕掛ける企業が直接株主にアプローチし、株式の取得を試みるという特徴があります。
日本において敵対的TOBがあまり行われない理由は、主に以下のような要因が挙げられます。
日本企業は取引先や系列企業と株式を相互に保有する「持ち合い」の文化が強いため、敵対的TOBを仕掛けても買収しにくい状況があります。敵対的TOBを成功させるには市場から多数の株を取得する必要がありますが、持ち合いによって流通する株式が限られているため、買収が難しくなります。
買収を阻止するための法規制や企業側の防衛策も、敵対的TOBが少ない理由の一つです。たとえば、新株発行による株式の希薄化(ポイズンピル)や、ホワイトナイト(友好的な第三者企業への株式譲渡)などが代表的な防衛策として挙げられます。さらに、日本の会社法や金融商品取引法には、買収プロセスを厳格に規制する条項が含まれており、買収者にとってハードルが高くなっています。
日本では敵対的買収に対するネガティブなイメージが根強く、企業の安定性を脅かす行為と見なされがちです。敵対的TOBを仕掛けた企業が市場や社会から批判を受けることで、企業価値が低下するリスクもあります。
敵対的TOBが成功しても、経営陣や従業員の協力が得られなければ、事業の統合が難航する可能性があります。労働組合の反発や内部の抵抗も発生しやすく、企業運営がスムーズに進まなくなるリスクがあります
防衛策や市場の反発により、買収が長期化し、コストが膨らむことも少なくありません。交渉や訴訟リスクもあり、最終的に割に合わない買収になるケースも多いです。
伊藤忠商事はスポーツ用品メーカーのデサントに対して敵対的TOBを実施しました。伊藤忠はデサントの大株主として経営支援を続けていましたが、業績の低迷が続く中、経営陣の刷新を求めました。しかし、デサント側がこれに応じなかったため、伊藤忠は1株あたり2,800円でTOBを実施し、最終的にデサントの株式の約40%を取得しました。
王子製紙は業界6位の北越製紙に対して敵対的TOBを仕掛けました。しかし、北越製紙は三菱商事に第三者割当増資を行い、日本製紙グループが北越製紙株を取得するなどの対抗策を講じました。結果として、王子製紙は目標とする株式数を取得できず、TOBは不成立に終わりました。
2024年12月27日、ニデック(日本電産)は牧野フライス製作所に対して、事前の同意や交渉なしにTOBを発表しました。TOB価格は1株あたり11,000円で、これは発表前日の終値(7,750円)に約42%のプレミアムを加えたものとなります。ニデックは2025年4月4日から31営業日のTOB期間を設定し、牧野フライスの全株式取得を目指しています。
この買収が完了すれば、総額で約2,500億円以上の大型買収となります。しかし、牧野フライスはTOB発表当日にこの提案を初めて知ったとされ、現在のところ賛否を明らかにしていません。2025年1月10日には社外取締役4人で構成される特別委員会を設置し、買収提案の是非や取引条件、手続きの妥当性や公正性について検討する方針を示しています。
事前の合意がないままTOBが進められていることから、今回のケースは敵対的TOBと分類されます。今後、両社間での協議や交渉の進展により、状況が変わる可能性もあります。
この記事はここまでですが、少しでもこれから就職活動を始める方々の参考になれば幸いです。また、他のライターによる興味深い記事もあるかと思いますので、就活の息抜きにでも読んでいっていただけると幸いです。
受けていた業界/企業:外資系投資銀行投資銀行部門(就職予定)・外資系戦略コンサルティングファーム