今回はSOLVE5期生(25卒)の方にご参加いただき、最近話題のMBO(Management Buy-Out)に関するレポートを作成しました。27卒の方やSOLVEに入会を希望される方のご参考になれば幸いです。
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MBO(Management Buy-Out)とは、企業の経営陣が外部の株主から企業の株式を買い取り、企業を非公開化するプロセスを指します。
上場企業であった場合、市場で取引されている株式を経営陣やプライベート・エクイティ・ファンドなどの外部支援者が買い取り、企業は上場廃止となり、非公開企業として経営されることになります。
MBOの主な目的は、上場企業が株主や市場から受ける短期的なプレッシャーを解消し、経営陣が自由に企業の戦略を策定できる環境を作ることです。また、企業は、外部の株主との利益相反を回避し、長期的な成長を実現するために柔軟に経営を進めることが可能になります。
MBOが行われる背景には、企業の経営戦略や市場環境の変化、株主の要求、あるいは経営陣のビジョンが関係していることが多いです。経営陣が自らの意思で企業を成長させるために必要な自由度を確保するために、MBOが選択されるケースが多いのです。
MBOによる非公開化には、いくつかのメリットがあります。まず、上場企業では外部株主や市場の影響を強く受け、経営が短期的な利益を優先せざるを得ない場合がありますが、非公開化によってこれらのプレッシャーから解放されます。経営陣は、より自由に長期的な戦略を立て、実行することができるようになります。例えば、新規事業への投資や、長期的な成長を視野に入れた企業の再構築などが可能となり、企業全体の競争力を強化するための環境が整います。また、MBOによって経営権が経営陣に集中するため、意思決定の迅速化が可能になります。株主総会での承認が必要な場合や、上場企業の規制を遵守するために時間がかかる場合など、外部の影響を排除することができるため、迅速な対応が求められる経営環境において有利に働きます。さらに、MBOによって外部株主との関係が整理されるため、利益相反を回避し、経営陣のビジョンに基づいた企業運営が実現できます。これにより、企業全体の方向性が一貫性を持ち、社員のモチベーションや経営効率の向上が期待されます。
MBOを実施するためには、経営陣が多額の資金を調達し、企業の株式を買い取らなければならないため、資金調達の難しさがあります。特に、大企業であればその規模に応じた資金が必要となり、プライベート・エクイティ・ファンドや銀行などの外部投資家からの資金提供を受ける場合が多いです。
日本におけるMBOの事例として、以下の企業が挙げられます。
ニチイ学館は、介護施設や関連する介護サービスを展開する企業です。2020年、創業一族とベインキャピタルがタッグを組んで、上場していた同社を非公開化するために、約1,000億円でMBOを実施しました。このMBOにより、経営陣は企業の支配権を取得し、外部株主との関係を整理することができました。非公開化後、ニチイ学館は急速に事業拡大を進め、多くの新規店舗を開店しました。2023年には日本生命に2,100億円で買収されました。
最近話題のセブンイレブンですが、クシュタールから受けた買収提案を阻止すべく、MBOを検討しました。クシュタールの7兆円提案を上回る最大9兆円規模のMBOになる可能性があり、これの実現には最大のパートナーと位置付ける伊藤忠商事の存在が不可欠でした。しかし、伊藤忠が計画を見直し、手を引いたことで、セブンイレブンは計画の見直しを迫られ、先が読めない状況が続いています。
2024年2月、アウトドア用品大手のスノーピークは、米投資ファンドのベインキャピタルと提携し、MBO(経営陣買収)を実施することを発表しました。このMBOの目的は、長期的な成長戦略を柔軟に遂行するため、株式を非公開化し、機動的な経営体制を構築することでした。同年4月にMBOは成立し、7月9日には東京証券取引所プライム市場への上場が廃止されました。
この非公開化により、スノーピークはベインキャピタルの支援を受けつつ、国内外での事業拡大や新規キャンパーの創出など、成長戦略を積極的に推進しているようです。
この記事はここまでですが、少しでもこれから就職活動を始める方々の参考になれば幸いです。また、他のライターによる興味深い記事もあるかと思いますので、就活の息抜きにでも読んでいっていただけると幸いです。
受けていた業界/企業:外資系投資銀行投資銀行部門(就職予定)・外資系戦略コンサルティングファーム