今回の記事では、外資投資銀行のJOBは具体的にどんな項目を考え、どのように進めれば良いのか?というメンティーからよく聞かれる質問に対する答えをまとめてみました。
ジョブにおいて、考慮/決定すべき項目は、1.当該企業の現状の事業内容や業績を整理すること、2.買収によって、どの事業を成長させるべきかを決定すること、3.2で決めた注力事業をどのような方向性で成長させていくかを決定すること、4.具体的な買収企業を決定し、いくらで買うという提案をするのかを決定すること、の4ステップに大きく分かれるかと思います。
以下、具体的に各ステップでどの情報源を使うのかや、意識すべきことを考えましょう。
決算説明資料や、有価証券報告書、中期経営計画などのIR資料を読んで、事業の全体像・概観を把握しましょう。具体的には、各事業の売上・利益の構成比、成長性や営利率、各事業の大まかな事業内容などを整理すると良いでしょう。また、各事業が置かれている市場環境や、競合環境、その中での自社の強みなども考えると良いでしょう。
その際に、有価証券報告書は事実を書いているのに対し、中期経営計画などは事実というより、その企業の理想像を描いたものに過ぎないことに注意しましょう。
考えるべき項目はいくつかありますが、EBITDAへの貢献性が高そうな事業か(売上貢献への期待が大きくなるか、EBITDAマージンは十分に高くなるか)や、会社としてもその事業に注力したいと考えているか、などを検討すると良いでしょう。後者に関しては、IR資料だけでなく、経営者インタビューなどにヒントが隠れている場合も多くあります。
どのような課題を解決するためにM&Aをするのか、はワーク中常に意識する必要があると思います。M&Aを提案するときには、自社が進出できていない領域はどこかを考え、それを補うM&Aを提案することも方針の一つです。バリューチェーン上で自社が進出できていないところを内製化する垂直統合や、類似したサービス・プロダクトを展開する企業を買収する水平統合や、日本よりもマーケットの規模・成長率が大きい海外に進出するエリア展開型のM&Aが挙げられます。
買収候補先となる企業のロングリストを作成します。ロングリスト作成時には、3までで考えた買収目的と一致する企業を5社弱選ぶことが多いです。この際に、買収目的との一致に加えて、規模(時価総額や売上)が一定程度あるかどうかや、買収可能性があるかどうか(株主構成の観点で、創業者が持分が多く、継承者を探しているような場合は買収可能性が高いなど)を考慮する必要があります。これらの情報を収集するツールに関して、会社側の指示があれば、そちらに従ってください。参考までに、SPEEDA(有料なので、班の中に、大学や長期インターン先などで契約しているアカウントを見られる人がいる場合のみ使用可能)やバフェットコード(無料ですが、類似企業検索機能や、過去財務状況を知る機能がついているため、かなり便利)などを活用すると良いでしょう。
次に、ロングリストで上がったそれぞれの企業の事業内容や、シナジー効果などをより精緻に評価し、買収提案をする1社を選定します。クライアント企業のどのような課題を解決するために、どのようなシナジーを狙って買収するのか、というストーリーをこの辺りで一度班で合意を取り、整理しておくと、スライド作成がスムーズに進むかと思います。
その次に、その企業をいくらで買収すべきかを決定します。詳しい買収価格決定方法は別記事に譲りますが、ジョブでは、市場株価平均法、類似企業比較法、DCF法を使って、合理的な買収価格を決定します。バリュエーションに関して困った場合は、各班担当のバンカーに質問してみると、丁寧に教えていただける場合が多いと思うので、積極的に聞いてみましょう。
最後に、一つ前の段階で求めた買収価格をどのように調達するのかを決定していきます。これも詳しくは別記事に譲りたいと思いますが、手元現預金の使用、銀行借り入れ、社債発行、新株発行などの手段のうち、資金調達コストが低いものを優先しつつも、DEレシオを悪化させ過ぎない組み合わせを選択します。
この記事はここまでですが、少しでもこれから就職活動を始められる方々の参考になれば幸いです。他のライターによる興味深い記事もあるかと思いますので、就活の息抜きにでも読んでいっていただけると幸いです。
WRITER:みやじ
受けていた業界・企業:外資系投資銀行投資銀行部門(就職予定)・外資系戦略コンサルティングファーム