グループディスカッション (以下、GD) は、多くの企業が課す重要な選考ステップです。与えられたテーマについて、限られた時間で結論を導く過程が評価されるGDでは、単に多く発言して定型的な正解を求めるのではなく、チームで成果を最大化する力が重視されます。
本記事では、GDを「選考の場」に留まらず、対話の実践力を醸成し成長の機会とするためのポイントを解説します。
GDはビジネス会議を模倣した形式で、「他者と協力して課題を解決する力」の程度を判断しているといえます。企業は主に以下の点を評価します。
・チームで成果を最大化する力:意見を引き出し、合意を形成する力。・実務での適性:論理的思考や課題解決力。・人柄の評価:協調性や他人の発言に対する柔軟性。
・コミュニケーション力:傾聴力:他者の意見を正確に理解し、議論を深める。巻き込み力:意見を促すなどして、活発な議論ができる環境を構築する。
・論理的思考力:共通認識の明確化:議論の「終着点」を明示し、メンバー全員が持つ前提や考えの方向性を一致させる。課題解決力:現状と理想のギャップを特定し、それを解消する提案をする。
・チームで成果を最大化する力:議論の進行と俯瞰力:迷走しそうな議論を修正し、結論に導く。柔軟性:他者の意見を取り入れつつ、自分の考えを適切に修正する。
GDでは「個人の力」より「チーム全体の力を引き出す能力」が評価されます。この基本を理解することで、自身の成長にもつながる重要な機会として活かすこともできます。次のセクションでは、GDの実践的な攻略法を解説します。
GDの中で意識すべきテクニックはいくつかあるものの、それ以上に議論全体を俯瞰し、アウトプットを最大化するマインドセットが重要です。本セクションでは、GDの序盤・中盤・終盤での具体的な立ち回りと、学びとしてのGDの捉え方を解説します。
A.第一声で存在感を示すGD開始時に「よろしくお願いします」と最初に発言し、心理的に意見を聞きやすい雰囲気を作りましょう。オンラインGDでは特に効果的です。B.前提条件を明確化する主体・目的・目標を共有し、前提と議論の方向性に対して共通認識を持ちます。「◯◯を前提とする必要があります」などと提案すると、迷走を防げます。C.仮説思考を取り入れる非定型的な議題では、仮説思考を駆使して全体像を描きましょう。「この課題は◯◯が背景にあると考えられます。その上で△△に焦点を当てるのはどうでしょうか」と提案することで、議論の方向性絞り込みに役立ちます。
チームのアウトプットの質×個人の貢献度が評価に大きく関わることを意識し、両立を図りましょう。
A.意見の協調と進行のバランスを取る「他人の意見に同意しつつ議論を進める」という2軸を意識しましょう。GDでも論理的思考は前提です。意見にはポジティブな反応を見せつつ、要素同士を結合したり層 (レイヤー) の違いを指摘したりすることで協調性と思考力の高さを同時にアピールできます。
B.俯瞰的な視点で整理する議論が複雑化した場合、全体を俯瞰し「この部分は△△に含まれると思いますが、認識合っていますか?」と共通認識を確認する発言が有効です。議論の構造を明確にしてから進みましょう。
C.巻き込み力を発揮する「先ほど◯◯について述べていた△△さんはどうお考えですか?」と、他のメンバーを巻き込む発言を心掛けましょう。過去の発言を汲んで促せるとよりよいです。
A.結論への帰着を補助する発言をする「今回の施策を選ぶ基準として◯◯が重要だと思います」と評価軸を示すことで、議論の熟度を高められます。残り時間に応じて、どこまで議論を精緻化すべきかを捉え、収束させる発言が求められます。どうしても議論しておかなければならないのは何か、取捨選択しその合意を取りましょう。
B.結論を俯瞰的に確認する「この施策が基軸になりそうですが、全体の目的に合っていますか?」と整合性を確認することで、議論のズレを修正し共通認識が形成できます。
GDは「目立つ」ことではなく、チーム全体の成果を最大化する力が評価される場です。この本質を理解し、次のようなマインドセットを意識しましょう。
・チームの成功を目指す他者の意見を尊重し、自分の提案で価値を加える。同時に発展させた発言を促し、議論の生産性を高める姿勢が重要。・正解よりも納得感を重視合意形成を優先し、全員が納得する結論を目指す。そのために議論の目標を意識し、現在の立ち位置が分かるようにする。・成長機会として捉える選考後に振り返り、Good/Moreを具体化する。新しい役割や発言に挑戦し、自分の可能性を広げることで様々な議論への対応力が上がる。・ビジネスマインドを持つ他者の視点を取り入れオーバーラップさせる姿勢が鍵。インパクトと実行可能性を考慮した提案を意識する。
~記事の終わりに~学生同士でなぜ議論させるのか?それは、個々の能力だけでなく、他者と協力しながら課題を解決する力が現実の社会で求められているからです。GDでは、異なる視点を持つメンバーを尊重しながら合意形成し、最大の成果を生み出す方法を擬似的に学ぶことができます。また、振り返りの際には、具体的な行動として次にどう活かすかを検討するとよいでしょう。GDには慣れ要素もあり、経験値を多く持つことも重要です。一歩一歩成長していくことを意識し、議論を楽しんでいきましょう。
WRITER:高尾
(受けていた業界) データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社