面接は、エントリーシート(以下、ES)等でアピールした内容を補完しつつ、自身についてさらに深く伝える場です。ただし、企業は経験やスキルだけでなく、エピソードの根底にある価値観やコミュニケーション能力、即応力から感じられる地頭の良さといった「その人自身」の魅力を見極めようとしています。
この記事では、一般的な面接(人物面接と言われます)で自身の能力と独自性を最大限に引き出し、選考を有利に進めるためのポイントを解説します。
面接は、単なる質疑応答の場ではなく、価値観や意欲を伝えることにより応募者が企業への適性を示す場です。企業にとっても、応募者のスキルや人柄を見極め、一緒に働きたい人材かどうかを判断する貴重な機会です。
そのため、面接では一方的に評価を受ける姿勢ではなく、自分の「物語(ストーリー)」を語る意識が重要です。ESに記載した内容に加え、具体的な背景や自身の考えを交え、企業で働く中でどのような価値を提供できるのかを伝えましょう。このアプローチにより、面接官に強い印象を残すことができます。
A.自身を正確に理解し、伝える自己分析を通じて、強みや価値観、キャリア目標を整理しましょう。特に、自身の経験が企業での貢献にどのように結びつくかを意識することが重要です。エピソードの行間を埋める過程で、どのような問題意識で行動に至ったのかを明確化することが効果的です。
B.企業を理解し、マッチングを考える企業研究によって企業の価値観や求める人材像を把握し、それに応じた自己PRを準備しましょう。具体例を通じて活躍するポテンシャルを示すことで、PRや志望動機に説得力が生まれます。
C.柔軟性を持ち、失敗を恐れない面接では予想外の質問が飛んでくることもありますが、むしろそれを自己表現のチャンスと捉えましょう。準備した内容から多少外れても、価値観に根差した一貫性のある考えが評価されやすいため、素直に述べることが重要です。
面接で魅力を最大限に伝えるには、基本的な心構えとともに、具体的な対策が必要です。次に、即興プレゼンや逆質問といった実践的なスキルについて詳しく解説します。これらを活用し、面接で自信と個性を際立たせましょう。
ガクチカや自己PRでは、抽象的な表現や個性に乏しい説明に留まり、印象に残りにくい深掘りになる例が散見されます。ここでは、限られた時間内で経験や強みを明確かつ論理的に伝える方法を解説します。
PREP法は、Point (結論) → Reason (理由) → Example (具体例) → Point (再結論) の流れで構成されるフレームワークで、短時間で明快な説明を可能にします。
この方法の最大の利点は、主張が最初と最後に明示されるため、面接官に伝えたいポイントが明確に伝わることです。主張を支える具体例を挟むことで、実績や経験に基づく裏付けが加わります。重要な部分は以下の通りです。
・結論を端的に述べるPoint部分で、回答の方向性を端的に伝えることが重要です。「私の強みは○○です」といった形で、簡潔に伝わりやすい形を目指しましょう。面接後に、面接官があなたを「○○の人」とイメージできる程度が理想です。
・理由はシンプルに、説得力を持たせるReason部分では、なぜその強みや経験が重要かを簡潔に説明します。具体例で補足する準備をしておくことで、主張に一貫性が生まれます。
・具体例で実績を可視化するExample部分では、数値化や具体的な状況の共有を通じて、エピソードの現実性やインパクトを認識させることが肝要です。
これを繰り返し練習することで、緊張しても論理的に答えを組み立てるスキルが身につきます。回答が長くなりすぎる場合は、ReasonやExampleを簡潔にし、Pointに重きを置くよう意識しましょう。
・行動の動機を考える「なぜその行動を取ったのか」を突き詰めることで、自身の考え方や価値観が明らかになります。
・課題解決のプロセスを掘り下げる「なぜその方法を選んだのか?」を問うことで、思考の判断基準や周囲への働きかけ方が整理されます。
・得られた学びを言語化する「なぜその経験が重要だったのか?」を考えることで、エピソードを伝えたいメッセージが絞り込まれます。
このようにWHYとその回答を繰り返す中で、自身の行動が周囲や結果に与えた影響を具体的に言語化することが重要です。面接官にとって、明確な意図に裏打ちされた意義のあるエピソードとして伝わります。
面接では、時に予想外の非定型的な質問が飛んでくることがあります。このような質問に対して見せる対応によって、自己理解の深さ、論理的思考力や柔軟性の高さをアピールする機会といえます。非定型質問への対応力を養うアプローチを紹介します。
A.価値観を明確にする非定型質問 (例: 「1000万円を自由に使えるなら何に使いますか?」) では、価値観に根差した優先順位を問う場合が多いです。こうした質問に備えるため、自己分析を通じて重視する価値観を深く掘り下げておくことが重要です。
・日常的に「自分ならどう考えるか?」を問い、判断基準や優先順位を整理しましょう。その上で、自身の経験や自己PRなどで話す内容との整合性を確かめましょう。
B.ロールプレイを活用する友人などとロールプレイを行い、即興で回答を構築する練習をすることで、瞬発力が鍛えられます。
・想定される質問リストを用意し、短時間で回答を組み立てるトレーニングを繰り返しましょう。論理的な構造と説得力を意識した回答ができるようになります。
C.批判的思考を日常で鍛えるニュースや意見文などを読み、内容を要約したりそれに対する意見を述べる練習を行うことも効果的です。非定型質問や時事問題にも冷静に対応できるようになり、質問の意図を素早く理解して的確な回答を導き出すスキルが身につきます。
コミュニケーション面での面接力を磨くには、フィードバックを活用した改善サイクルが不可欠です。活用方法は様々ありますが、自身に合う方法を見つけ、サイクルとして継続することが重要です。
・録画(録音)して客観的に評価する自分の回答を録画(録音)し、話のテンポや内容の構造、表情、声のトーンを客観的に確認しましょう。癖や話の曖昧な部分を発見する貴重な手段です。
・模擬面接で他者からの視点を得る信頼できる友人などに面接官役を依頼し、具体的な改善点を教えてもらいましょう。他人のフィルターを通じた評価は、新たな気づきをもたらします。
フィードバックを活用する際、以下のようなポイントに注意してください。
・自己評価の甘さ録画を見ても何が悪いか分からない場合があります。評価基準を具体化 (「回答の構造」「結論の明確さ」など) すると効果的です。
・フィードバックの表面的な受け止め指摘を受けた際、表面的な理解で改善を試みると、次の面接で同じ問題を繰り返す恐れがあります。フィードバックの意図を再解釈し、自分の言葉で落とし込む姿勢が重要です。
・改善の目的を見失う改善の方向性が曖昧だと、練習が場当たり的になりがちです。最終的に「説得力があり、印象的な回答」を目標にし、伝えたいメッセージを軸に据えましょう。
フィードバックは課題を指摘するだけでなく、得意な部分を見つける機会でもあります。全体の回答の質向上のため、面接の内外で成長機会を見つけ、できることから修正していきましょう。
~記事の終わりに~私自身、最初は驚くほど面接に落ちる就活生でした。しかし、どうすれば面接官が知りたいことを面接時間の中で伝えられるか?という観点で記事に記載されたような訓練を積むと、面接が全く怖くなくなると共に通過率も格段に上がりました。自己表現には無限の可能性があります。他人と比較しすぎることなく、準備を重ねてください。
WRITER:高尾
(受けていた業界) データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社