前の記事でコーディングテストの選考理解と対策について説明しましたが、同じくらい経験するであろう選考が研究内容の深掘りや技術的な質問を伴う面接です。これも技術寄りの選考なのは確かですが、「面接」であるという点で情報展開の仕方や深掘り質問への対応力も試される、複合的な側面もあるといえます。面接対策の記事と合わせて、今の自分自身が埋めていくべきところを明確にできるとよいでしょう。
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ITやデータサイエンス系(以下、IT/DS)の職種には、大学・大学院でアカデミックな研究に取り組んできた人材が数多く応募します。企業が研究内容を尋ねる最大の理由は、学術的な深さをどれほど持ち合わせているかを確認し、将来的に業務へ応用できる可能性を見極めるためです。重視する部分として以下が挙げられます。
・学術的な深さ: アルゴリズムの数理的根拠、統計モデルの理論背景、実験設計の厳密さなど・業務への応用力: 研究で得た理論や実装のスキルが、企業の実データ分析・プロダクト開発・コンサルティングなどで活きる道筋があるか
一方で、新卒や若手採用では即戦力よりもポテンシャルが重視されることも多いです。研究による実績そのものより、仮説構築や検証のプロセス・困難に取り組んだ姿勢などが評価されます。
また、研究面接の位置づけにも大きく2パターンあります。
・「ガクチカ」としての研究就活全般でよく聞かれるガクチカの1つとして研究内容を盛り込む学生が多いため、その説明をどこまで深掘りするかがポイントです。
・学術的な深さの見極め特に研究職寄りのポジションや先端技術に強い企業では、研究を通じて培った理論の理解や仮説検証能力を厳しく問われることがあります。企業によってはCTOやR&D部門のトップが直接研究内容を深掘りする例もあります。「今までの選考で学術的深さをもう少し聞いておきたい」と判断されたら、最終面接に盛り込まれる可能性が高まるといえます。
・「なぜそのテーマを選んだのか?」先行研究を見て課題を感じたのか、学問的な興味からか、社会的課題を解決したいと思ったのか。モチベーションの源泉を知り、後の行動へのつながりを見ることができる質問です。
・「学術的・社会的な意義は何か?」純粋に学問の発展に寄与する研究なのか、実務での応用先が明確なのか。同時に、研究の新規性をアピールするチャンスでもあります。
・「具体的なアルゴリズム・統計モデルは何を使ったのか?」例えば機械学習の話題であれば線形回帰・決定木・深層学習、最適化手法などの選定根拠を問われる場合が多いです。分析は目的ではなく手段なので、その手法で「どのように嬉しいか」を言語化する必要があります。
・「どのような実験設計を行ったのか?」トレーニングデータとテストデータの分割方法、評価指標の選び方などがこれに当てはまります。
・「他の手法と比較検討したか?」学術研究では比較対象(ベースライン)を設定するのが基本です。特に、先行研究と比較してどの部分を踏襲しどの部分に手を加えたのかを明確にしましょう。
・「結果をどう解釈しているか?」結果そのものの解釈力だけでなく、分析精度が高まった理由や、失敗した要因を分析し、再現性の程度や研究の限界を把握しているかを確認する質問です。
・「企業の業務データに適用するなら?」顧客情報や売上データなど、実務上のデータセットを想定し、研究手法をどのように応用できるかを聞かれることもあります。アカデミックとビジネスでの応用の方向性の違いを意識できるとよいでしょう。
就活全体を通してはガクチカのエピソードや志望動機の方がよく聞かれるので手薄になりがちではありますが、ガクチカ的な視点と実務応用性の2軸で詰めることが効果的です。
・分かりやすい説明を準備する専門用語の定義を簡潔に行い、複雑な部分は要点(前提として知らないと後続の説明が理解できなくなる部分や「どう役立つか」の部分)のみを伝えるようにしましょう。スライドを使う場合は技術的な部分を図解するとよいです。面接官が技術者とは限らないため、噛み砕いた解説が必要なことも想定するようにしましょう。可能であれば、事前に別の研究室や専攻の人に見てもらう機会があると理想的です。
・研究を通じてポテンシャルを示す「研究によって得た力でどのように業務に貢献できるか」を考えながら話すことで、面接官に将来の活躍をイメージさせることができます。ビジネスでも予想通りにならない状況は多々あるため、研究途中での挫折や試行錯誤プロセスが見えるように伝えると、それもアピールになります。
・数値的・論理的根拠を提示する予測精度の向上率や計算コストの削減量など、客観的な指標を成果の中で示すと説得力が増します。論文などで行うベースライン比較と同様の手法を取り入れたと伝えるのも効果的です。(指標についても、専門外の人にも理解される設計を準備しておきましょう)。
~記事の終わりに~研究はテストとは異なり、決まった答えがなく、まだ誰も見つけていないインサイトを得る行為だと思います。それはビジネスとも呼応する部分があり、不確実性の中でどのような仮説を立て、分析し、施策につなげるかという一連のプロセスは共通します。特に大学院の研究と就活を両立しようとしている人は、今の研究を必ず成功させなければいけないとシビアに感じるかもしれませんが、問われることの根幹は人物面接のエピソードトークと大差ないと思えれば、より楽に考えられるのではないでしょうか。
受けていた業界/企業:データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社