IT/DS系の特徴的な選考を理解する(3)ー IT系ケース面接

公開日:2025/06/17

IT/DS系の選考は技術的知識やビジネスへの運用を問うフローが多くありますが、主にITコンサルではケース面接を課されることもあります。単に「技術がある人」「研究ができる人」であれば良いわけではなく、確かなビジネスの視点を持ち、全体像を考えながら論理性を示せるかという部分も重要です。企業や職種によって選考の質に差が出やすい部分のため、全体的な傾向と特徴的な場合をいくつか挙げて説明します。

IT系ケース面接 (主に総合系コンサルのIT系職種)

ITコンサルのケース面接では、ビジネス課題とIT要素を絡めたケースが頻出です。

(A) 典型的な出題パターンとITコンサル特有の傾向

典型的な出題パターンは以下の2タイプです。

・デジタル戦略の立案に関する課題

例:特定の現場においてDX (デジタルトランスフォーメーション) を成功させる戦略策定
最新テクノロジー (AIやブロックチェーン等) のビジネスへの影響を説明し、活用策を提案するタイプのケースです。​学生なりの技術トレンドの理解とビジネスインパクトの関連付けが問われます​。

・IT×ビジネスケースの課題

例:ある業界の利益率を、「ITを用いて」30%増加させる施策立案
現状の課題抽出とそれに対応する改善提案を通じて、インパクトと実現可能性を最大化する視点が求められます​。

これらは実際のITコンサル業務で頻繁に直面する課題であり、技術に対する知見とビジネス感覚の両面をもって臨む必要があるといえます。知見の部分はテクノロジーの細かい仕組みを指しているのではなく、この技術を用いることでどのような利点・リスクが生じるかを大枠で説明できることが重要です。そのベースは一般常識+α (研究などで知っていること) になります。


一般的な戦略コンサルのビジネスケースが論理的思考や一貫性を厳しく問うのに対して、IT系のケースでは論理性だけでなくテクノロジーに関する知見とその活用の上手さも評価される点が独自の傾向だと考えられます。活用できる知識として知っていれば打ち手の数も増えるため、多少のミスをカバーできるともいえますが、論理的思考が前提であることは言うまでもありません。純粋な技術論に終わらず、特定した課題に対して技術をどう橋渡しできるかを示すことが重要です。​


一部のデータサイエンティスト職のケース面接では、データ解析の知識をベースにしたケースが出題される場合もあります。その場合も、面接の中でデータ解析をする訳ではなく、より上流に立って「どのようなデータが必要か」「得られた知見を基に、どのような意思決定が出来るか」を検討していくことになります。

(B) 効果的な対策方法とケース検討例

体系的な思考フレームワークを身につけておくと、ケース面接で論理的に回答しやすくなります。まずはコンサル志望者として必須のフレームワーク (MECEな切り口、3C分析、SWOT分析など) を理解しながらビジネスケースを演習し、加えてITケース向けに技術要素を組み込んだお題で準備しましょう​。その中でITトレンドを知り、テクノロジーの知識面の漏れを補えると理想的です。

「ある業界の利益率を、ITを用いて30%増加させる施策立案」をケースで出された場合を例として、代表的な検討ポイントを挙げていきます。

現状分析:対象業界の課題を整理

利益率の現状を把握し、業界の課題を特定します。そこで利益率を下げる要因が売上にあるか、人件費や在庫管理などのコストにあるかを整理します。ITを活用することでどこに変革の余地があるのかを明確にします。

利益率向上のためのIT施策の検討

インパクトを基に、コスト削減と売上向上のどちらを軸にするのか決めます (多くの場合、両方の視点が必要です) 。AIを活用した需要予測による在庫最適化、RPAを用いた業務の自動化、データドリブンなパーソナライズマーケティングの導入などが挙げられますが、各施策の導入により、具体的にどのような利益改善が期待できるかを説明する必要があります。

リスク分析:IT導入のハードルを考慮

リスクには技術的なもの (導入難易度・既存システムとの統合性) 、組織的なもの (オペレーション変更への抵抗、ITリテラシーの格差) 、コスト的なもの (初期投資の大きさ) があります。施策による副作用も考慮すべきです。例: EC強化の施策を提案する場合は、「物流負担増によるコスト上昇」なども考慮する。

実行可能性:施策の優先順位付け

すぐに実施可能な短期施策 (データ分析基盤の整備など) と中長期での投資が必要な施策 (AI導入による一部業務の自動化など) の施策規模を二分します。現状の企業のリソースやスキルセットを想定し、インパクトと実現可能性の高い施策を優先して施策とします。

30%という数字がどのように達成できるかを、概算でよいので定量的に根拠づけます。このように、「業界の現状→IT活用の可能性→リスク→実行プラン」の流れで構造的に整理することで論理的な回答を組み立てることができます。

このタイプのケース面接では、ITの導入は手段であるため目的化しないのはもちろんですが、「どのようなIT技術が課題解決に適しているのか」だけでなく、「企業がその施策を実際に導入できるのか」という視点も併せて説明できると、より説得力のある回答になります。そして、技術×ビジネスの視点を常に意識し、数値的な根拠も交えて答えるとよいでしょう​。

(C) IT系ケース面接の心構え

よく聞く話だと思いますが、ケース面接は面接官との双方向のやり取りで進むものであるため、双方向コミュニケーションが適切に行えなかった場合は低評価になりやすいです。

(B)で紹介した検討ポイントを基にファーストアウトプットの質を上げるべきなのはもちろんですが、面接官の指摘を基に課題特定や施策立案フェーズをブラッシュアップしたり、背景を伝えて補強したりする姿勢こそ不可欠です。ケース面接は「討論」ではないため、自身の意見の正当性をアピールし論破するというのはNGです。面接官のコメントに応じて、「正しく伝わっていなかった部分を補足する (こちらは練習する中で減らせると良い) 」「面接官が重視して見ている要素を検討したことを示す」「抜け漏れた視点を補って施策を再検討する」ことを通じ、互いに共通認識を持てる状況をつくりましょう。例えば、面接官が「定量効果」というキーワードを繰り返し強調したため、効果を数値で示すことを意識して議論を進めたというのは良い心掛けといえます。

~記事の終わりに~
テクノロジーの知識をベースにとは言うものの、面接で行うべきことの本質は結局ビジネスケースと変わらないことが分かったかと思います。普段のケース対策がそのまま活きるということなので、あまり気負いすぎず取り組めばいいのではと感じます。その中で、施策の幅出しがしづらかったり、面接の中で知識があまりにも足りないと感じたりしたらテクノロジーの知識を補う、くらいの気持ちで十分です。場数を十分に踏んで、思考力とITへの関心が伝わる面接を目指していきましょう。

高尾
執筆者:高尾

受けていた業界/企業:データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社

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