IT/DS系の特徴的な選考を理解する(1)ー コーディングテスト

公開日:2025/04/17

ITやデータサイエンス(以下、IT/DS)などの領域においては、選考プロセスで特有のスキルを問われることが多々あります。これは、ただ「興味があります」という意欲やコミュニケーション能力だけでなく、実際に手を動かしてプロダクトを開発・分析する力や、研究内容を応用する能力が重要視されるからです。本記事では、IT/DS職の選考における特徴的な選考の中で最もハードスキル寄りといえるコーディングテストについて、その背景と効果的な対策を紹介します。

コーディングテスト:アルゴリズムの理解力と実装力の評価

(A) コーディングテストとは?なぜ行われるのか

多くのIT/DS系の企業では、エンジニアやデータサイエンティストを志望する学生たちの技術力を試すためにコーディングテストを実施します。ビジネスの比較的上流に関わる職種であっても、データを取り扱うためのスクリプトや最適化ロジックなど、「解析のための素地をつくる」実装が必要な場面は少なくありません。企業側の主な評価軸として、基礎的なアルゴリズム知識とともに、コーディングのスピード感やデバッグの正確性を確認することが挙げられます。

IT業界の中でも、外資系の大手テック企業やデータコンサルティング企業では倍率が高くなる傾向があるため、特定のパターンを最低限把握しておくことが重要です。

(B) コーディングテストの形式と出題例

コーディングテストの難易度は企業によりさまざまですが、事業会社で明確にエンジニア/DS枠を分けて採用しているメガベンチャーや、AIに深く関係する職種では比較的難解な問題が出る傾向があります。テストに使われるプログラミング言語については、多くの言語の中から選べる形式のことも、特定の言語で解答しなければいけない場合もあります。また、受験環境は個人PCによるオンライン受験が主流ですが、不正防止策として受験者の画面/キーログ監視が導入されるなど、生成AI等の技術の変化にも対応されるようになっています。

テスト内容としてはほとんどが以下の3つの分類に属するものです。

1.アルゴリズム系の問題
リスト操作やグラフ理論、動的計画法などの一般的なアルゴリズムを用いた問題が出題されます。正しく解が求まれば基本的には問題ないですが、中には解法の効率性(時間計算量など)も評価される場合があります。多くの問題がこの分類になります。

アルゴリズム系の問題で頻出といえる分野を紹介します。

・文字列操作:反転、部分文字列検索、パターンマッチングなど。
・配列・リスト操作:ソート、検索、マージ、データの追加・削除など。
・スタック・キューの活用:括弧の対応判定、ジョブスケジューリングなど。
・再帰・動的計画法:最長共通部分列、ナップサック問題など。
・木・グラフアルゴリズム:DFS/BFS、最短経路探索、二分探索木の操作。

2.SQLの問題
データベースのテーブルからクエリを適切に取り出し、加工することが求められます。各種集計や結合、ウィンドウ関数などの使い方が問われることがあります。データエンジニアリング系のポジションに比較的多い形式です。

3.統計解析・機械学習の問題
線形回帰や決定木、主成分分析など、統計学や機械学習に関するコードの実装を求められます。DS系の志願者にとって、データ解析に不可欠な基礎を問うものが多くなっています。

(C) 効果的な対策方法

・問題演習サイトの活用
AtCoder, LeetCode, Paizaなどのサイトを活用し、アルゴリズム問題を繰り返し解くことでコーディングのスピードとエラー対処能力を高めることができます。難易度別に問題が用意されているため、演習する問題は志望企業の最近の状況を見つつ、自身が60%前後正答できるレベルから段階的に上げていくと、効果的にコーディング力がつくでしょう。なお、難関と言われるコーディングテストは、AtcoderのC,D問題に近いレベルだと言われています。

・データ処理と統計解析の演習
DS系の選考でSQLや統計解析が出題されるケースもあるため、BigQueryやPostgreSQL、LeetCodeなどで練習しましょう。頻出の呼び出し句や関数の知識に抜けがある場合は、基本問題を活用しながら覚えると効果的です。研究で得られる知識にはどうしても偏りが出てしまうので、演習を通じてバランスよくしていけるとよいです。

・時間配分とデバッグの訓練
コーディングテスト本番では、冷静に問題を解決する能力が求められます。受験する前に本番環境に慣れておき、最適な時間配分を身につけておきましょう。
時間管理面では模擬試験形式で時間を計りながら解く練習が、バグ発見力の向上には境界値でも正しく動作するかを確認しながらコードを実装する習慣をつけることが効果的です。実行をたくさんして部分的に検証するのも最初は大事ですが、実行せずにコードを自力で修正する力がつくと問題への対応力が飛躍的に上がります。

~記事の終わりに~
IT/DS就活は、研究室などの身近なコミュニティで対策が事足りてしまう人もいますが、受験者の母数が少ないために情報が過少になりがちです。その状況の中でどのように対策の時間を有効に活用するか?という場合に知っておくべき、また意識しておくべきなのが今回紹介したようなことなのだと感じています。テスト本番では使えませんが、訓練の過程では生成AIは非常に役に立つので、独学でも勉強しやすくなったのではないでしょうか。楽しみながら取り組んでいきましょう。

高尾
執筆者:高尾

受けていた業界/企業:データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社

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