企業研究は、他の学生と差をつける重要なプロセスです。表面的な業界や企業の知識を収集するのでは不十分で、それを深く知り自身の考えを持つことで、志望動機や自己アピールの説得力が高まります。
この記事では、2つの視点から企業研究のアプローチを提案します。様々なツールを活用し、企業理解を深く得る方法を紹介します。最適なキャリア選択をするためのヒントとして、ぜひ役立ててください。
「情報収集といえばとりあえず企業名で検索」と考える人がいますが、このアプローチでは表面的な情報にとどまることが多いです。はじめに公式情報を存分に活用しましょう。決算資料やIR情報で中長期の企業動向や実績を確認したり、競合他社との比較を通じて志望企業の強みや独自性を把握したりすることで、志望動機などの強化が可能です。
企業の公式サイトでまず目を通すべきは、企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。これらは一般に、企業理念・経営目標・行動指針に対応します(企業により定義が入れ替わる場合があります)。企業の将来像やその実現に向けた戦略が頂点にあり、達成のために企業がどのように価値基準を持ち行動していくかを示します。その会社でのビジネスは、ミッションやビジョンの達成に近づくものか?という規準の下で実施することになるわけです。そのため、自身のキャリア目標や価値観がMVVとどのような親和性があるかを捉え、それを基に志望動機を組み立てることで、説得力を持たせることができます。
ちなみにMVVとはそれぞれ以下のようなものです。
ミッション:Why=なぜその事業を行うのかという存在意義
ビジョン:What=何を目指すのか
バリュー:How=どのように目指すのか。価値判断や行動原則
公式サイトには当然、企業の事業内容や成長戦略に関する情報も掲載されています。企業がどのような分野で事業を展開しており、今後はどのように拡大する予定かを把握することで自身がその成長にどのように貢献できるかを考えることができます。決算資料やIR資料といった経営計画や財務状況の情報と合わせて確認するとよいでしょう。そしてこれらの情報は、自分の言葉に落とし込むことが大切です。面接では「弊社がどのようなことをしているか理解しているか」という企業理解を試す質問への回答や逆質問のベースになるため、情報を見て考えるクセをつけましょう。
競合他社との比較を通じて志望企業の強みや独自性を把握することも重要です。競合他社の情報を収集し、どのような市場で競争が行われているのかを把握しましょう。これにより、市場における志望企業の相対的なポジション、また企業の成長機会やリスクを見極めることができます。例えば、競合他社が価格競争を強化する中で、志望企業が顧客体験やサービスの質に注力している場合、その企業の独自性を強調することができます。しかし面接においては、独自性が自身の経験に照らした上でどう良いのか?というところまで検討するようにしてください。
これらの情報ソースの活用を通じて、志望動機や自己PRの中で自身がどのように貢献できるかを明確にすることが重要です。これらの情報を咀嚼し、選考で他者と差別化する武器にしていきましょう。
企業の公式情報や一般的なデータを集めるだけでは、企業の内部事情や実際の働き方を十分に把握できません。自ら積極的に情報を取りに行き、現場の声を聞くことが必要になってきます。ここでは、就活仲間との協力、OB/OG訪問、スカウトアプリを活用した情報収集の方法と、その意義について解説します。
就職活動は、個別に進めるだけでは視野が狭くなりがちです。同じ業界や企業を目指す就活仲間と情報を共有することで、企業理解が深まると共に、情報収集を効率化できます。座談会やインターンシップなどの経験をシェアすることで、公式の情報では得られない企業文化や業務の実情に触れることができます。さらに就活中に築いた仲間との関係は、今後のキャリアにおいても大切な資産になります。後続の選考に関する記事でも述べますが、Giverの精神のもとで互いの情報を補完し合うという姿勢でいると長期的な利益を得やすいです。ビジネスパートナーにもなりうるため、就活仲間との協力を積極的に行いましょう。
OB/OG訪問は、現場のリアルな声を知るため有効な手段です。職場の雰囲気やそのギャップ、キャリアパス、必要なスキルといった情報は、現場で働く人にしか分かりません。そして、福利厚生を含め本音で聞ける貴重な機会でもあります。彼らに質問する際は、なるべく自身の仮説を持った上で具体的な内容を聞くとよいでしょう。それだけで良い印象になりますし、期待している答えが出やすいです。内定者は勤務における解像度は劣るものの、最新の選考状況を知っているという点で訪問のメリットが大きいです。SOLVEを始めとしたコミュニティでは、主にメンタリングを通した内定者訪問や、就活仲間とのコネクションの面で価値を提供しています。訪問後にはメール等で感謝の意を示し、関係を維持することが重要です。今後のキャリアサポートやアドバイスにつながるため、単なる情報収集の場としてだけでなく、人脈形成の機会として捉えるとよいでしょう。
スカウトアプリも、企業研究を進める上で効果的なツールです。自身のスキルや経験を登録することで企業から直接オファーを受け、評価されるスキルを知ることができます。加えて、これまで興味がなかった業界や企業からのオファーを受けることもあり、選考の幅を広げる機会にもなります。スカウトを通じて自身の市場価値を知り、新たなキャリアパスを発見することもあります。このような企業を調べ、自分が挑戦したいことに合うかどうかを見極め、アップデートしていくことも就活軸の明確化につながります。
就職活動では、受け身的に情報を得るのではなく、自ら情報を取りに行くスタンスが重要です。これにより、現場の声やフィードバックを得て企業の実情を理解し、志望動機や自己アピールに具体的な根拠を持たせることができます。また、就活で出会った人々と関係を構築し、長期的なキャリアに活かすことも考えて取り組みましょう。
~記事の終わりに~「企業研究はコスパが悪い」と思う方もいるかもしれません。しかし、公式の情報と社員の声などの独自性のある情報を組み合わせることで、選考で他の候補者と差をつけることができるため、決して侮れない要素です。
企業研究は就活のためだけでなく、将来を深く考える契機となる重要なプロセスです。情報を集める過程そのものが、あなたの成長につながるといえるでしょう。
WRITER:高尾
受けていた業界・企業:データサイエンティスト職を中心に、戦略/総合コンサル、投資銀行、広告、メーカー、メガベンチャー等約100社